正常な脊髄後根を牽引しても痛くない(横田敏勝先生【滋賀医科大名誉教授】)
ドクターの横田敏勝先生(滋賀医科大名誉教授)の神経圧迫による痛みの考察です。
神経痛一般の発現機序
痛覚線維の生理的興奮は、その末梢の自由終末にある痛覚受容器(侵害受容器)が刺激されたときにみられる。
自由終末と脊髄を継ぐ部分からインパルスが発生することはめったにない。
痛覚受容器を介さずに神経線維からインパルスが発生することを異所性興奮という。異所性興奮を生じる可能性が高いのは、脱髄部および傷害された末梢神経の側芽と神経腫である。(外部リンク:加茂整形外科医院(「臨床医のための痛みのメカニズム」)より引用)
神経根痛
脊髄後根を圧迫すると神経根痛(radicular pain)がでて、圧迫された後根の支配領域に痛みが走るとみられている。しかし、この考えは特別な場合にしか通用しない。たとえば、脱髄線維を含む脊髄後根への機械刺激は神経根痛を誘発するが、正常な脊髄神経根の圧迫は痛みを生じない。
実験動物の正常な脊髄後根を圧迫しても、痛みを伝える侵害受容線維を含めた求心性線維の持続的発射活動は誘発されない。しかし、あらかじめ傷害しておいた脊髄後根を機械刺激すると、持続的なスパイク発射が誘発される。
バルーンカテーテルを使って正常人の脊髄神経根を圧迫すると、錯感覚(paresthesia)と感覚鈍麻が誘発されるが痛みではない。正常な脊髄後根を牽引しても痛くない。しかし、傷害歴のある脊髄神経根を鑷子で圧迫したり、縫合糸をかけて牽引したりすると、特徴的な神経根痛が走る。
私は残念ながらそのようなヘルニアにかかわる痛みをみたことがありません(加茂淳先生【加茂整形外科医院】)
ドクターの加茂淳先生(筋筋膜性疼痛症候群研究会(MPS研究会)名誉会長)の「臨床医のための痛みのメカニズム」の考察です。
自由終末と脊髄を継ぐ部分からインパルスが発生することはめったにない。
特徴的な神経根痛と思われたときは、ヘルニアよりは神経腫とか神経の傷害、脱髄を想定すべき。私は残念ながらそのようなヘルニアにかかわる痛みをみたことがありません。医師としてめったにないこともでも一応想定すべきことではあるが、まずはもっとも多いことを想定して治療にあたるべきである。
(外部リンク:加茂整形外科医院(「臨床医のための痛みのメカニズム」)より引用)
まず生じている痛みが侵害受容性疼痛なのか、病的な神経根を刺激した時の神経根痛なのかを判断しなければいけない。
脊髄反射により筋肉がけいれん,緊張し,痛みが生じる(腰痛)というメカニズムです(加茂淳先生【加茂整形外科医院】)
ドクターの加茂淳先生(筋筋膜性疼痛症候群研究会(MPS研究会)名誉会長)の痛みのメカニズムの説明です。
どこかで腰を打った,転んだ,重い物を持ち上げて,ぎっくり腰になったなどによる“一過性の大きな侵害刺激”や,毎日,車を運転したり,草むしりをしたり,スポーツをしたりすることによる“慢性的な侵害刺激”,あるいは裁判中など大きなストレス下にいるときに生じる“心理的緊張”などで,痛み神経が刺激されると,脊髄反射により筋肉がけいれん,緊張し,痛みが生じる(腰痛)というメカニズム(図1)です。
(外部リンク:M-Review(Person 診療・研究の現場より)より引用)
また,痛みがあれば,筋肉がけいれん,緊張するので,ますます痛みが強くなり,さらに筋肉がけいれん,緊張して痛みを強くするという悪循環を形成します。
筋膜性疼痛症候群(MPS)により発生する疼痛のメカニズム(JMPS MPS研究会)
JMPS MPS研究会の痛みのメカニズムの説明です。
圧痛点、トリガーポイントの発生
異常なfasciaが発生すると、その部分の血流が阻害されその部位が酸素欠乏になります。酸素欠乏が起きると血液中の血漿からブラジキニンなどの発痛物質が生成されて、それが知覚神経(C線維)の先端にあるポリモーダル受容器に取り込まれて痛みを感じます。
このような症状が発生して物理的に圧力を加えると痛みを感じる点を圧痛点と呼び、その中で以下に記載をする働きにより、物理的に圧力を加えると広範囲に痛みを感じる点を発痛点(トリガーポイント)と呼びます。
反射
筋膜性疼痛症候群(MPS)では、発痛点(トリガーポイント)などからの痛みを捉えた脳、脊髄が、反射により交感神経を働かせて、さらにトリガーポイント部及び周辺の筋肉の血管収縮を行わせることにより、再び酸素欠乏が発生し再び発痛物質が生成されるという悪循環が発生します。
これが、広範囲で疼痛が広がる筋膜性疼痛症候群(MPS)のメカニズムと考えられています。
(外部リンク:筋膜性疼痛症候群研究会(反射)より引用)
亢進が拘縮発生・進行の前兆となっている可能性がある(青梅慶友病院リハビリテーション室)
青梅慶友病院リハビリテーション室の伸張反射と拘縮発生の考察です。
伸張反射による関節拘縮の発生予測
臨床での体験や先行文献などから「拘縮が発生しやすいか否かは伸張反射で予測できる」という仮説の検証を行い、昨年の岐阜大会にて「伸張反射が拘縮発生の予測因子の1つとなる傾向がある」と報告した。今回は対象者を拡大(昨年の対象者条件から「膝伸展制限角度-30°未満」を除外)し、伸張反射と拘縮発生・進行(以下、発生・進行)の関係性を検証した。
【考察】
今回、対象者を拡大し伸張反射と拘縮発生・進行の関係性を検証したが、カイ2乗値とリスク比から考えると、仮説を立証できる有意差は得られなかった。しかし、亢進群の12関節中11関節においては亢進がみられてから発生・進行していた。このことから亢進が拘縮発生・進行の前兆となっている可能性があるのではないかと考えられる。
(外部リンク:伸張反射による関節拘縮の発生予測(国立研究開発法人科学技術振興機構)より引用)
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